それは、バリアフリーではありませんよ


コンビニエンスストアーよりも多いと言われる歯医者さん。
競争が激しいこともあり、院内設備に力を入れるところが増えているようです。

・ベビーカーや車いすのまま診療室に入ることができる
・待合室や診療室内にキッズスペースの設置
・アロマを焚く
・フリードリンク
・マッサージチェア

等々…。

そのなかで「?」と感じるのは、「院内はバリアフリー設計になっています」という点です。確かに床は段差がないようですが、それだけではバリアフリーの条件を満たしていません。トイレは車いすの方でも使える設備になっているの?通路に手すりはついているの?…これらを含めなければ、バリアフリー設計とは呼べないのです。

バリアフリーと公言している歯医者さんへ実際に訪れると、通路に手すりがない、車いすのままトイレに入れない、玄関に段差が、もしくは玄関前の歩道に段差があり車いす移動が困難、医院が2階にあり階段でしか上がれない…。

誇張表現というよりかも、虚偽広告にあたります。このようなHP(ホームページ)や広告を打ち出している医院・歯科医院及び、医院検索予約サイトは、すぐに訂正をしましょう。


院内の段差さえなければバリアフリー設計
…ではありません




などに、そういった決まりが書かれています。官公庁の書類はとても読むのが難しいのですが、ちょっとでいいのでご覧いただければと思います。

これらを読むと、トイレについて

・手すりがついている
・出入り口の幅が80㎝以上である
・扉は引き戸か外開き戸などが望ましい

など、いくつかのバリアフリー基準が設けられているようです。ちなみに外開き戸は、外に向かって開く扉のことです。逆に、自分のいる方向に向かって開く扉を、内開き戸と言います。



特定の建築物には法律によって
バリアフリー化が義務付けられています


つまり、段差さえなければバリアフリー設計なのだ…とは言えません。ご高齢の方や足の不自由な方のために、院内の至る所に配慮をおこなう、これこそがバリアフリーなのです。医療に従事している医師・歯科医師であれば、この程度のことは知っておいてほしいと思います。

そもそも、2006年に「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー法)が制定され、公共交通機関・道路・路外駐車場・都市公園・建築物に関しては、国の定めた基準によるバリアフリー設計が義務付けられています。そして、罰則としては20万円から300万円までの罰金が定められています。

罰則を含めた「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」が、こちらに書かれています。

ただしここには抜け道があって、この法律は、特定建築物を新築・増築・改築・用途変更する際に適用されるものです。なので、既存の建築物に対しては「基準に適合する努力義務」のみにとどまっています。

また、バリアフリー法が適用されるのは、床面積の合計が2000(公衆便所は50)以上の建築物となります。1階のみの平屋で考えると、50mのプールが3面ほどと想像すると分かりやすいですね。


国土交通省・警察庁・総務省「バリアフリー新法の解説」より


これらの建築物が該当します


これに、各都道府県のバリアフリーに関する条例が組み合わされることになります。東京都を例にすると、該当する建築物は、以下の通りです。

・百貨店・スーパーマーケット
・劇場・映画館・演芸場
・ホテル
・老人ホーム
・学校
・集会場・公会堂
・博物館・美術館・図書館
・入院など患者さんを収容するための施設がある病院・診療所
・もしくは500㎡以上の診療所(入院施設がないものに限る)

ほかにもたくさんあるのですが、詳しくはこちら…東京都による「建築物のバリアフリー化をすすめるために!」をお読み下さい。


長い説明になってしまいましたが、床面積2000㎡以上の病院・診療所のバリアフリー化は、国の法律によって義務付けられています。新築などではない場合も、努力義務が定められています。また、都道府県の条例によっては、さらに厳しい基準が設けられています。

こちらは、和田眼科のHPにて、バリアフリーについて写真付きで説明しているページです。車いすが通りやすいよう、幅の広い通路には手すりがついています。トイレには手すりはもちろん、車いすのまま入室できるよう、広いスペースを取っています。しっかりとバリアフリー化をされている医院かと思われます。


「うちは小さい医院・歯科医院だから、義務の対象ではない、しかし段差をなくし歩行しやすくなっている」…これは確かにメリットとして宣伝してもいいと思うのですが、ほかにトイレや通路などにも手すりを設置するなどの配慮をしない限りは、バリアフリーと宣伝してはいけないと思っています。




【今週のスポットライト!】




2019年公開で、よかった映画のひとつ。
星に語りて~Starry Sky~」は、耳の不自由な方や知的がいのある方にもご覧いただけるよう、さまざまな「演出」が施されている。
サウンドトラック(音楽だけでなく、自然の中にある音も含む)が流れると、画面左上に音符マークが現れる。
「♪津波の音」といった具合に。
また、役者は聴き取りやすくはっきりと喋るし、喜怒哀楽をはっきりと表情に出すといった「演出」も特徴だ。

しかし、オーヴァーアクションや大げささは、感じない。東日本大震災で、障がいを持った方々がどのように亡くなってしまったのか、また生き延びることができたのか。事実を基にしたストーリーによって、置かれた状況の困難さが伝わってくる。最後のシーンで被災地に流れ着いたある「物」を観て、涙が止まらなかった。

東日本大震災の際、耳や目が不自由で避難警報が分からなかった。そして「個人情報の保護」が弊害になり、障がいを持った方が避難できたか調べることができなかった。…などこの映画が描いてくれている様子は、良書「ディプソル Vol.1 多様性社会の再生-被災地の現実 障がい者の働く現場 」(游学社:肝)にも詳しく書かれているので、ぜひ読んでほしい。(すぐ右下のamazonリンクをクリックすると、本の詳細情報、出てきます)






曽根己 晌圭(そねみ しょうけい)
お問合せ・ご意見・執筆依頼などは
shokei.sonemi@gmail.com まで…


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